みんホル通信No1
毛髪ホルモン量測定ってどんなもの?
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#AGA #はげ #薄毛 #育毛
『髪の毛の検査ではどんなことがわかることあるの?』
『検査の信頼性はどうなのかな?』
『ホルモンってどんな働きをするの?』
この記事の監修者
株式会社あすか製薬メディカル 検査事業部 開発研究部 係長(理学博士)
保房 佳孝(ほぼう よしたか)
2005年:東京工業大学理学部地球惑星科学科 卒業
2007年:東京工業大学社会理工学研究科 修士課程修了
2013年:株式会社あすか製薬メディカル 入社
2024年:筑波大学理工情報生命学術院 生命地球科学研究群 博士後期課程修了
株式会社あすか製薬メディカルに入社後、生体試料中の微量ステロイドホルモン分析法の開発業務を担当し、毛髪試料からのステロイドホルモン測定を主な研究テーマとされています。現在までに研究成果を学会や海外の査読付き科学雑誌に発表するなど、精力的に活動を行っておられます。
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『髪の毛の検査ではどんなことがわかることあるの?』
『検査の信頼性はどうなのかな?』
『ホルモンってどんな働きをするの?』
ステロイドホルモンについて
人間の髪の毛には様々な情報が含まれています。
例えばミネラル、亜鉛、水銀、Mg、Na、ヒ素などの元素が含有されています。最近では34元素を髪の毛から測定できる企業もあります。
参考資料:毛髪ミネラル検査34元素│ら・べるびぃ予防医学研究所 (lbv.jp)
また違法薬物、違法ドラッグの検査を髪の毛で実施する事をご存じの方もいるのではないでしょうか?
参考資料:毛髪からの薬物検査 |法科学鑑定研究所 (alfs-inc.com)
ドラマなどで髪の毛からDNA鑑定する事などもありまよね。実はDNAを抽出することは可能ですが、いくつかの条件があります。毛根が付いている髪の毛であれば、DNAの採取が行えます。毛根には多くの細胞が含まれており、これらの細胞からDNAを抽出することができます。
一方、毛幹(髪の毛の軸部分)からのDNA抽出は難易度が高く、成功率も低いです。毛幹には微量のDNAしか含まれておらず、またメラニンなどの成分がPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を阻害することがあります。
そんな様々な生体情報を含んでいる髪の毛ですが、今回ご紹介する『ステロイドホルモン』も含有されています。
ステロイドホルモンは性成熟、糖代謝、恒常性の維持に重要な生理活性物質です。
ステロイドホルモンの内因性濃度は様々な生理的・病理的状態を反映するため、バイオマーカーとしても利用されています。
- ステロイドホルモン
- アミン類
- ペプチドホルモン
の3種類に分けられ、脂溶性と水溶性の物質があります。
【ステロイドホルモン】
コレステロールを主に原料として生成されます。
- 性ホルモン(アンドロゲン、エストロゲン、プロゲステロン)
- 副腎皮質ホルモン(コルチゾール、アルドステロン、副腎アンドロゲン)
- ビタミンDなど
【アミン類】
アミノ酸誘導体を主に原料として生成されます。
- 甲状腺ホルモン(サイロキシン(T4)、トリヨードサイロニン(T3))
- 副腎髄質ホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリン)
【ペプチドホルモン】
アミノ酸を主に原料として生成されます。
- その他のホルモン(インスリン、グルカゴン、成長ホルモン、オキシトシン、抗利尿ホルモンなど)
ほとんどの研究ではホルモン測定には血液(血漿、血清)、唾液や尿が測定試料とされ、利用されていますが、近年、毛髪中のステロイドホルモンに関する研究が増加しています。
毛髪中の濃度は過去一定期間のホルモン分泌を示すため、ホルモン分泌の概日リズムの影響を受けない毛髪試料は従来の試料と比べて有用性が高いと考えられます。
毛髪でのホルモン量分析について
毛髪中のステロイドホルモン分析は当初、スポーツドーピングの為のアンドロゲン濃度測定方法として研究され、その後、毛髪のグルココルチコイドを測定することにより、慢性ストレスの評価に応用されるようになりました。
最も有名なのは毛髪中のコルチゾールが心血管疾患および職業性ストレスと有意な相関があることを示したManenschijnらの報告です。
今回は本研究所で報告した論文を元に毛髪のホルモン量測定について解説していきます。
「この論文では、毛髪中のステロイドホルモンが、頭部の各領域(前頭部、頭頂部、後頭部など)で濃度差があることを明らかにしました。特に、AGAの原因物質であるDHTが、その症状の起こりやすい頭頂部中央にて高値になることがわかりました。」
これまでの毛髪でのステロイドホルモン測定法では最低10mgの試料(1分析にあたり約100本)が必要でした。その為、今回、頭の部位別に毛髪を採取する9点測定を行うためには900本の毛髪が必要です。
髪の毛は非侵襲な試料ですが、これだけ多くの量になると被験者にとっては負担となってしまいます。
そのため、本研究所では第1段階として、少量の毛髪からでもステロイドホルモンを定量できる方法を研究、報告しました。
毛髪試料よりステロイドホルモンを測定する試みは、いくつかの既報が存在する一方で、そのプロトコルについては、報告によって様々であり、技術的には改善の余地がある状態でした。
特に、先行研究においては測定に要する毛髪量が10mg程度であり、毛髪本数に換算すると約100本程度になるため、運用上は被験者負担が大きいという課題がありました。この課題解決のため、アッセイに用いる毛髪使用量を1/10(1 mg)に削減する方法について検討しました。先行研究においては、毛髪から抽出されたステロイドホルモンを唾液用ELISAキットによって測定する方法も報告されていたが、イムノアッセイでは同時に複数のステロイドホルモンを測定することはできません。
同一の毛髪試料から複数のステロイドホルモンを分析する方法としてLC-MS/MSによる方法を確立しました。その分析方法は、10種のステロイド(F、E、T、DHT、DHEA、A-dione、P4、P5、Δ5-A-diol及びE2)についてFDA Bioanalytical Method Validation GUIDANCEに準拠した形で妥当性が評価され、すべてのパラメーターにおいて良好な結果を得ることができました。
下記図では各ステロイドホルモンのピークを表しております。
頭の部位ごとに異なる毛髪検体でのホルモン量の違い
続いて、前述した様に頭の部位の9点測定を実施しました。
当社独自の研究で頭の部位によって、毛髪でのホルモンの分泌量が異なる事がわかりました。
例えばAGAの要因となるジヒドロテストステロンは頭頂部、他のホルモンは後頭部で多く分泌されています。
またAGA患者と健常者での頭頂部の毛髪DHT濃度を測定した所、AGA群で有意に高いという結果となりました。
対象的にテストステロン濃度を測定した頭頂部の領域ではDHTの測定時のような傾向はみられず、頭頂部と後頭部の有意差はありませんでした。これはテストステロンが末梢血から真皮乳頭細胞に輸送され、そこでDHTに変換されるという先行研究で示された知見と一致します。
毛髪コルチゾールの研究は海外で進んでいます。主に慢性的なストレス評価として、その濃度は過去における末梢ホルモン分泌の平均値を反映していると考えられています。
この研究での毛髪コルチゾールとコルチゾンは後頭部に高濃度であり、先行研究と一致しています。
毛髪はその成長過程で血中のコルチゾールを取り込みます。毛髪は1カ月に約1cm 成長するため、例えば、頭皮から1cm の毛髪は直近の1カ月間の体内のコルチゾール分泌を反映していると考えられます。このような背景から、毛髪コルチゾールは中・長期的なコルチゾール分泌の新たな評価指標として有望視されています。
この研究によって得られた治験を根拠として、当社で販売をしている毛髪ホルモン量測定キット~ジヒドロテストステロン~は頭頂部より採取、他ホルモン測定キットは後頭部より採取としています。
但しこの研究にはいつくかの限界があります。内分泌学的研究においては、血清や血漿等の血液試料を用いたホルモン濃度の解析が重要になりますが、本研究では血液試料を用いた実験は行っておりません。血清や血漿のホルモン濃度に関するデータは先行する研究に多く存在する為、今後の研究では血清や血漿のサンプルを用いた研究も進めるべきと考えます。
本検査は疾患の診断に代わるものではございませんが、ご自身の健康状態を知るツールの一助となれば幸いです。
参考資料:
- Measurement of steroid hormones by liquid chromatography-tandem mass spectrometry with small amounts of hair Steroids 164 (2020) 108732
- Analysis of hair steroid hormone concentrations at different parts of the head by liquid chromatography-tandem mass spectrometry Clinica Chimica Acta 523 (2021) 260–266
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